大判例

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神戸地方裁判所 昭和44年(ワ)1391号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔編註〕 本誌二六八号一一六頁参照。

〔判決理由〕(一)、抗弁事実中、昭和四三年一一月二九日訴外秀雄が原告会社従業員の運転する車に轢かれ、死亡したので、被告らが原告を相手どつて、昭和四四年に損害賠償請求の訴を提起したことは当事者間に争いがない。

<証拠>を総合すると次の事実が認められる。

訴外秀雄の死亡事故後、被告らは原告に対し、慰藉料等の損害の賠償を請求したが、右事故は同僚加害として原告が掛けていた四〇〇万円の任意保険の免責事項にあたり、従つてその分は原告が負担しなければならず、右四〇〇万円に、前記本件事故による損害額四五〇万円余を合わせると、合計八五〇万円余となり、右金額は原告における四か月分余の純益にあたるので、原告は、これを負担するには余りに大きい額であると考えた。そこで原告は、本件事故について訴外秀雄に過失があつたことを理由に右損害の一部を負担してほしい旨を被告らに交渉したが、結局、原告、被告ら間に話合いがつかず、被告らは原告に対し、損害賠償請求の訴を提起し、原告会社内においては今まで役職にある者について求償権を行使した例もあつたので、原告はその後、本件訴えを提起した。

右認定した事実に前記当事者間に争いのない事実、更に前記したように原告が本件事故の各被害者らに損害賠償をなし、従つて被告らに求償する額が確定したのが昭和四四年二月一五日であるとの事実を併せ考えると、原告が訴外秀雄の原告会社内における責任をすでに不問に付していたということはできず、また原告がその営業上の収益を図り、確保するという企業維持の点から本件訴えを提起したとしても、そのことをもつて原告に被告らに対し害を加える目的があつたということはできず、他に原告に加害の意思があることを認めるに足る証拠はない。また、本件は私的な当事者間における金銭的な解決をいかにするかにとどまるものであるから、後記諸般の事情を考慮しても、原告の求償権の行使が権利の濫用であるとまではいうことができない。

(二)、ところで、原告は、多くの車輛を保有してこれを運行に供し貨物自動車による運送事業を営んでいるものであるから、その運行過程には常に、身体、生命、財産等に危害を加える危険性を伴つているのであり、このような事業を営むものとして、常に危険を計算したうえで事業を営み危険に対する責任を負担すべき義務があるものであり、また、原告は、右のような車輛の運行と原告の保護のもとにある訴外秀雄およびその他の従業員の勤務によつて収益をあげているのであるから、その収益をあげることに必然的に伴う危害に対しては責任を負担すべき義務があるものであつて、原告に被用される者が他に加えた危害が不法行為として損害を賠償すべき場合には、右被用者と共に、自らも、損害を賠償すべき義務があるといわなければならない。

そして、使用者が、被用者の加害行為により他人に損害の賠償をした場合には負担部分について求償関係を生じ、使用者が、被用者の負担部分として求償できる範囲は、被用者の不法行為の程度、使用者側の人的、物的な組織上の管理、当該車輛の整備等に関する責任、直接車輛の運転に従事した者の責任等、一切の事情を考慮し公平の見地から決すべきものと解するのが相当である。

これを本件について検討するに、前記認定した事実に、<証拠>を総合すると、訴外秀雄は、訴外小島に整備不良の本件事故車を使用させ、これが本件事故の一因となつていること、訴外秀雄は、原告会社の新川営業所次長とはいえ一か月五万円余の給料を受け、また運行管理者として一か月一、〇〇〇円の手当を支給されているにすぎず、自己において危険を負担するに足る充分な待遇を受けておらず、訴外小島は、昭和四二年九月二六日原告に雇われたが、右採用に際しては履歴書を提出し面接を受けた程度であつて、運転技能等についての調査はなく、採用の後も安全運転についての教育、運行管理者である訴外秀雄との連絡についての指図を受けたこともなかつたこと、本件事故車は、いわゆる予備車として平素整備不良のまま放置され、しかも、整備不良のまま月に四、五回使用され、原告およびその従業員らはこれを黙認していたこと、本件事故が、本件事故車の運転に従事した訴外小島の運転方法に過失があり、それが事故の一因となつていることが認められ、以上の事実その他一切の事情を考慮するとき、訴外秀雄の負担部分として原告が訴外秀雄に求償しうるのは、前記四五二万三九四〇円の一五パーセントである六七万八、五九一円であるというべきであり、以上の一切の事情を過失相殺として斟酌しても右金額をもつて相当というべきである。

(下郡山信夫)

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